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がれき広域処理

1.私たちの想い

被災地のがれき受け入れを・・・

1 被災地の生活

私たちは東日本大震災で大地震と津波の影響を大きく受けた被災地へ昨年から何度か足を運んできました。震災から一年余りが経過した被災地を訪れると、一見、散乱していたがれきは姿を消し、復興に向けてのがれき処理が着々と進んでいるかのように思えます。しかし、さらに各所を回っていくと、所々でがれきが堆く山積みになっている景色が次々と目に飛び込んできます。被災地では仮焼却施設を複数設け、急ピッチで処分を進めているものの、現地の方に聞くと、このがれきの山はどんどん大きくなる一方で、処理自体は追いついていないとのこと。仮置き場で、積み上げられ続けているがれきは、火災や悪臭、ハエの大量発生を引き起こしています。
また、被災地で暮らす方々の生活を見渡すと、家族で生活し、商店街の姿もあります。しかし建物をよく見ていくと、住宅も、学校も、店舗も、それらのほとんどがプレハブで作られていることに気づきます。つまり、未だに被災地の生活のほとんどは仮の状態です。街からがれきの山がなくならない限り、街の整備にも手を付けられず、本格的な復興への一歩を踏み出すこともままならない状況です。がれきは物理的問題のみならず、精神的な壁となっています。
被災地の方々の願いは、一刻も早くがれきの山が無くなることです。私たちは今、「被災地の方の心情にどれだけ寄り添えるか」が問われています。

2 広域処理の必要性

広域処理の議論のなかには、「がれきの処分目標である震災から3年という期間をもう少し先延ばしにすれば、被災地ですべて処分ができる」との声もあります。しかし被災地の方が望んでおられるのは、震災から3年後時点での処分ではなく、1日も早い復興です。被災地では急ピッチで焼却処分を行っているものの、岩手、宮城、福島3県を合計したがれきの処理・処分割合の進捗は未だに全体の12.3%(2012年5月7日時、環境省より)に留まっています。岩手県議会議員にその状況を聞くと、「被災地の方の生活に触れていると本当に辛いが、私はいずれ言わなければいけない。がれきの処理は3年では間に合わないと。」と険しい表情でお話されます。
広域処理の必要性は私たちが考えている以上に、被災地にとって何物にも代えがたい復興支援です。震災から一年以上が経ち、対岸の火事となりつつある現在、改めて被災地の復興、日本の復興のために、受入れを推進すべきと考えます。

3 安全性について

放射能への安全性は各所で議論がなされており、国際的にも何が安全で何が安全でないかという議論は分かれるところです。しかし、IAEA(国際原子力機関)の定める基準により、身体への問題はないと一定量認められた基準があります。日本はIAEAに批准しており、今回の広域処理に関してもIAEAに定められた規定に収まる範囲で処理計画が立てられております。
簡単にですが、環境省の基準の出し方を申し上げます。今、がれきの受入基準や焼却、埋立ての基準が示されていますが、それらはがれき処理でもっともがれきに触れると思われる作業員の年間に受ける放射線量を想定して決められています。作業員の受ける放射線量が1ミリシーベルト(/年)以下であれば、世界平均で人々が受ける年間放射線量と同程度のものになるとされています。

日本平均 作業員の受ける放射線量 合計 世界平均
1.4 + 1.0 2.4 2.4

(単位:ミリシーベルト/年)

また、一部で「放射能が地下に漏れ出すのではないか」、「焼却時の煙から放射能が拡散する心配はないか」等の疑問が出ていますが、これに関しても環境省の見解や、京都市環境局の見解等を見合わせたうえで、これらの疑問は誤解であり、上記による心配は発生しないとの結論を出しております。なお、判断に至る細かな理由については、「がれきの広域処理におけるQ&A」にて言及させていただいております。

2.動画レポート

①京都市内放射線量測定

京都市内放射線量

施設名 天候 測定対象 測定値(μSv) 測定者 市町村名
京都駅中央改札 大気中 0.071 江村理紗 京都市
京都御苑入口 大気中 0.087 江村理紗 京都市
京都府庁前 大気中 0.105 江村理紗 京都市
京都市役所ガレージ 大気中 0.063 江村理紗 京都市
京都市役所正面玄関階段 大気中 0.189 中島拓哉 京都市
京都市役所正面玄関前花壇 大気中 0.081 中島拓哉 京都市
京都市役所東玄関地上30cm 大気中 0.096 中島拓哉 京都市
京都市役所東玄関階段 大気中 0.232 中島拓哉 京都市
河原町御池交差点 大気中 0.072 中島拓哉 京都市

②陸前高田放射線量測定

陸前高田市放射線量

施設名 天候 測定対象 測定値(μSv) 測定者 市町村名
仮置場 木くず置場の大気中 0.063 村山祥栄 陸前高田市
仮置場 木くず 0.055 村山祥栄 陸前高田市
仮置場 コンクリート 0.064 村山祥栄 陸前高田市
仮置場 土砂 0.102 村山祥栄 陸前高田市
仮置場 鉄スクラップ置場の大気中 0.053 村山祥栄 陸前高田市
仮置場 大気中 0.049 村山祥栄 陸前高田市
仮置場 廃タイヤ 0.066 村山祥栄 陸前高田市
別の仮置場 大気中 0.061 村山祥栄 陸前高田市

3.Q&A

東日本大震災に伴うがれきの広域処理について、受入れ、焼却、埋立てなど、さまざまな疑問があるかと思います。この度、主なものをQ&Aとしてまとめておりますのでご参照ください。
その他、広域処理におけるQ&Aに関しましては環境省をはじめ、他の自治体でも作成されておりますのでご紹介させていただきます。

環境省 広域処理情報サイト「よくあるご質問」

大阪府 災害廃棄物(がれき)処理への支援について(よくあるご質問)

北九州市 災害廃棄物の受入検討に関するQ&A

下記Q&A以外の広域処理の受入れに関するお電話でのご質問は、お問い合わせが大変混みあっておりますので、FAX及び当ホームページお問い合わせフォームのみの受付とさせていただきます。尚、お問い合わせの回答につきましては可能な限り下記Q&Aに追加する方法で対応させていただきます。予めご了承くださいますようお願い申し上げます。

京都党市会議員団室
FAX 075-213-3301
お問い合わせフォーム

必要性、がれき利権

  1. 安全?コスト?スピード?何を優先すべきなのか?
  2. 放射性物質は隔離すべきではないか?
  3. 広域処理にするとコストが高くつくのではないか?
  4. 広域処理は地元が望んでいないのでは?
  5. 受け入れなくても処理できるのでは?
  6. がれき利権という指摘があるが・・・
  7. 広域処理には裏に色々あるのではないのか?
  8. 災害廃棄物と放射性廃棄物は何が違うのか?

震災がれきの受入基準、放射性物質の安全基準

  1. ベクレルとシーベルトの区別がつかないですが・・・
  2. ミリシーベルトとマイクロシーベルトの違いは何ですか?
  3. がれきから出る放射線は危険ではないですか?
  4. 広域処理はどこの地域のがれきを受け入れるのか?
  5. 京都市の広域処理での放射性物質濃度の目安値はどうですか?
  6. 例えば8,000ベクレル/kgとはどういった数値ですか?
  7. なぜ国(環境省)で定める基準より京都市(関西広域連合)の基準は厳しいのですか?
  8. 安全の基準にセシウムばかり用いられているが、ストロンチウムやプルトニウムなどもチェックする必要があるのでは?
  9. アスベストや六価クロムなど放射性物質以外の有害物質は問題ないか?
  10. 自然の放射性物質と原発の放射性物質とは性質が異なるのではないか?

焼却、埋立て方法とその安全性

  1. 京都市での広域処理はどこで実施するのか?
  2. がれきを燃やすときに、セシウムなどの放射性物質が大気中に出てしまうのでは?
  3. 放射性物質は焼却時に気体となって煙突から煙として出てしまうのでは?
  4. 焼却による飛灰は、被災地で行われている焼却状況の結果から埋立て目安を超える(8,000ベクレル/kg)ものも検出されているが、京都ではどのように処理するのか?
  5. 京都市の広域処理で受け入れた分の焼却灰の埋め立てはどこで行うのか?
  6. なぜ京都市内の最終処分地ではなくフェニックスを使用するのか?
  7. がれきを燃やしたあとの灰を埋め立てると、セシウムなどの放射性物質が地下水となってしみ出る危険性があるのでは?
  8. 半永久的になくならない放射性物質を含む埋立地をずっと管理することはできるのか?

【1.必要性、がれき利権】

安全?コスト?スピード?何を優先すべきなのか?

これは、被災地と非被災地によって分かれるところだと思います。非被災地にとっては、安全性の確認が最優先です。すでにガイドラインに示している数字は安全性が確保されたものであり受け入れに問題はありません。

被災地にとっては、一も二も無くスピードなのです。瓦礫の山からは未だに腐敗したご遺体が発見されます。仮置き場のせいで公共用地がほとんどつぶれています。港町の港が仮置場となり漁業が止まったままです。そして物理的な視点だけでなく、精神的な壁になっているということをわすれてはなりません。我々から見れば瓦礫でも、現地の方からすれば、家財道具の山、つまり思い出の山なのです。だからこそ、現地からは廃棄物と言わないでという声が多いのです。瓦礫をみると辛い思いになるという事実から目を背けてはなりません。3年という基準は勝手に国が目安として決めただけの年限です。地元の要望は一刻も早い復興であり、広域処理が全てではありあませんが、復興への大きな手助けであり、とにかくスピードなのです。

放射性物質は隔離すべきではないか?

これは結論から言うと不可能です。人間を含めたあらゆる生物から放射線は放出されているとおり、放射性物質は人々の日常生活に溢れています。

ちなみに馴染みの深い有馬温泉ラジウム鉱泉は1リットルあたり1630ベクレル、武田信玄ゆかりの山梨の増富温泉A9号泉は1リットルあたり16万5000ベクレル(※1)です。花崗岩、いわゆる御影石はキロ当たり500~1600ベクレルです(※2)。また日常生活の中でも世界平均で宇宙から0.39ミリシーベルト、大地から0.48ミリシーベルト、空気中から1.26ミリシーベルト、食物から0.29ミリシーベルト、合計で年間2.4ミリシーベルト(日本の平均値は1.4ミリシーベルト)という放射線を受けています。ちなみに、ブラジルのガラパリの自然放射線量は年間10ミリシーベルトです(※3)つまり、重要なのは、一時期に高濃度の放射線を受けることが問題であり、ゼロにするというのは不可能であり、そこを求めるべきものでもないのです。

※1 野口喜三郎(1979)、温泉科学29(49)P.213
※2 国連放射線影響化学委員会報告(1982)
※3 電気事業連合会「原子力・エネルギー図面集」(2011)

広域処理にするとコストが高くつくのではないか?

コストだけで言えば、現在東北にある焼却炉だけで処理するのが最もコストがかかりません。しかし、それでは処理が追いつかないというのがこの話の発端です。この場合、広域処理と仮設焼却炉設置の2案があるわけですが、仮設焼却炉は1基あたりの費用は数十億円と大変高額で、結局県外処理と比べると焼却単価はほぼ同じ位だと言われています。同時に、仮設焼却炉は一基で一日100トン、年間3.5万トンしか処理できません。それよりも、実は県内の焼却能力を増やしても、最終処分場(焼却灰を棄てるところ)が不足しており、これ以上作れないのが現状なのです。正確に言えば、建設するのには、場所の選定、地域との協議、環境影響評価(これだけで3年掛かります)など6年から8年と膨大な時間を要する為、実質的には間に合わないということです。

広域処理は地元が望んでいないのでは?

確かに南相馬市長や岩泉町町長は、瓦礫を護岸工事に使いたいという発言や地元の雇用創出につながるので地元で処理したいという声があります。また、街は高台移転するのだから、沿岸部の瓦礫は全く障害にならないとの声もあります。これだけ大きな事業になると関係者も多岐に渡る中で、こういった声はごく一部に過ぎず、その他のほとんどの自治体が広域処理を望んでいます。事実、我々は現地に何度も足を運び住民の悲痛な叫びを、また当局の思いを繰り返し聞いて参りました。特に沿岸部は平地面積が少なく、事実漁港などの生活拠点が瓦礫仮置き場になり復旧の妨げになっています。夏場はメタンガスが溜まり自然発火が頻発し、悪臭が発生し、衛生上も問題も多く指摘されています。また、瓦礫を見るとフラッシュバックを起こすなど精神的な圧迫も相当多く見られるのが実態です。ちなみに現在の瓦礫選別において土砂等は既に復旧資材として利用されています。

また災害廃棄物選別現場は地元雇用を優先的に行っていますが、発災当初はともかく、現在は既にバランスが取れており、今は瓦礫処理業務という臨時的雇用よりも正規雇用が求められています。

受け入れなくても処理できるのでは?

被災地の災害廃棄物は、岩手県が530万トンで通常の12年分、宮城県は1150万トンで14年分の量に値します。災害廃棄物の処理は阪神大震災の復興を参考に3年以内(26年3月)と定められました。

岩手県では120万トンのがれきを広域処理として依頼しながら焼却を進めていますが、県内で処理する約半分が復興資材としての利用や、そのまま売却できるものであるとしても、全てを県内処理すると5年近く掛かると言われています。このままでは目標達成が厳しい状況です。

環境省によると、2012年5月7日時点で、がれきの処理率が12.3%。震災から一年あまりでようやく10%を超えたところです。決して順調なペースとは言えません。

被災地の方にとっては、3年という目標ではなく一日も早くがれきを処理し本格的な復興に向かうことが願いです。

がれき利権という指摘があるが・・・

確かにこれらの処理には地元業者よりも圧倒的に大手ゼネコンが中心に業務委託を受けて作業をしています。

がれき利権があるかどうかはわかりません。ただ、そういったものが利権化しているならば由々しきことです。

しかし、それと広域処理は全く別の問題です。かつて日本列島改造論で全国に高速道路網を作ったときも、道路利権は沢山ありました。しかし、当時作った高速道路が全て不要なものであったと言えばそうではありません。利権があろうがなかろうが、必要な政策は必要です。そして、それとは別に一部の人間が不当な利益を享受しているならばそれは追及する必要があると思います。

広域処理には裏に色々あるのではないのか?

原発の再稼動ともリンクする話ですが、再稼動賛成派のひとたちもそこに雇用があり、ビジネスがあり、そのメリットを享受しようとしている人がいるでしょう。しかし、反対派の人たちも反対することによってメリットを享受できる人たちがいるのも事実です。中には政治的に利用しようとする動きや利権に群がる動きがあっても何ら不思議ではありません。想像したくありませんが、放射能危険と言って利するのは誰か、安全と言って利するのは誰か、どちらもあるのです。だからこそ、そういったことを抜きにして、日本にとって、京都にとって、市民にとっていいのか、悪いのか、私たちはそこを基準に考えます。

災害廃棄物と放射性廃棄物は何が違うのか?

現在、放射性廃棄物として移動を禁じて、一元管理しているのは福島県内の廃棄物です。今、広域処理が求められているのは岩手と宮城の2県の災害廃棄物です。混同されることが多いですが、全く別のものであり、岩手と宮城の瓦礫は、一般廃棄物として処理していいという安全基準をクリアしたものを指しています。ちなみに、福島と岩手の距離は、福島―横浜間の距離に匹敵するほど離れた場所なのです。

【2.震災がれきの受入基準、放射性物質の安全基準】

ベクレルとシーベルトの区別がつかないですが・・・

放射線の単位には、放射能を出す方に注目した単位「ベクレル」【記号Bq】と、放射線を受ける方に注目した単位「シーベルト」【記号Sv】があり、目的に合わせて使い分けられています。

例えば、放射性物質を懐中電灯にたとえてみると、懐中電灯の放つ光が放射線、光を出す能力を放射能、そして懐中電灯本体は放射性物質ということになります。

放射線が人体に与える影響は、放射線の種類やエネルギーの大きさ、放射線を受ける身体の部位なども考慮した数値(シーベルト)で比較する必要があります。(※4)

ベクレルとシーベルトの明確な相関関係はありませんが、基本的に高い放射能濃度(ベクレル)の場合、高い放射線量(シーベルト)が放たれているということになります。

※4 電気事業連合会「放射線Q&A」(2011)

ミリシーベルトとマイクロシーベルトの違いは何ですか?

1マイクロシーベルトは1ミリシーベルトの1000分の1の値です。

つまり、1マイクロシーベルト=0.001ミリシーベルトとなります。

がれきから出る放射線は危険ではないですか?

放射線はありとあらゆる物質から放出されています。もちろん瓦礫からも放出されています。これは我々が独自に現地へ入り調査した結果ですが、陸前高田の瓦礫の仮置き場で廃タイヤ、鉄スクラップ、土砂、木くずなどそれぞれ分別されたがれきの山に近づけて放射線量を測定してみると、おおむね一時間当たり0.05~0.09マイクロシーベルトでした。つまり、京都市内の大気中の放射線量とほぼ同程度ないしはそれ以下という結果です。したがって、発せられた放射線が危険ということはありません。むしろ、一年以上たって、現地の瓦礫に付着したセシウムの大半は既に雨に溶け出し地中に流れ込んでいる可能性があります。

広域処理はどこの地域のがれきを受け入れるのか?

広域処理の対象となるがれきは岩手県、宮城県で発生したがれきです。

福島県のがれきは広域処理の対象にはなっておらず、岩手県と宮城県で発生したがれき(地震や津波などで発生した廃棄物)を国から要請されています。京都は現在、宮城県の災害廃棄物を受け入れると言うことになっています。なお、福島県のがれきは、国の直轄事業・代行事業などにより県内で処理されます。

京都市の広域処理での放射性物質濃度の目安値はどうですか?

受け入れるがれきは100ベクレル/kg以下、陸地で埋め立てる焼却灰は2,000ベクレル/kg以下で検討されています。

環境省 京都市(関西広域連合)
受入れの目安値 240ベクレル/kg 100ベクレル/kg
埋立ての目安値 8,000ベクレル/kg 2,000ベクレル/kg

京都市では関西広域連合で定めた基準値を用いる予定です。環境省の定める数値よりもさらに厳しいものとなっています。京都市の受入れ目安である100ベクレル/kg以下という数値は、「廃棄物を安全に再利用出来る基準」とされるクリアランスレベル(一般ゴミ相当)で、IAEA(国際原子力機関)が認める基準です。

ちなみに、国の数字ですら極めて安全性の高い数字であり、広域連合でわざわざ定めなおすことによって、まるで国の数字が「高い」と錯覚させるのではと懸念している位です。慎重に慎重を期した結果ですが、元々は食べても安全な値としていた数字よりも厳しくしているのが現状なのです。

例えば8,000ベクレル/kgとはどういった数値ですか?

埋立処分場で作業する人(もっとも放射能の影響を受けると考えられる方)であっても年間の追加被ばく線量が1ミリシーベルト/年以下になるように出された数値です。

廃棄物を安全に処分するために法律で定められた基準値で、放射性セシウム濃度がこれ以下であれば一般廃棄物と同様の埋立処分ができます。この値はIAEA(国際原子力機関:International Atomic Energy Agency)も認めているものです。

なぜ国(環境省)で定める基準より京都市(関西広域連合)の基準は厳しいのですか?

埋立処分場で作業する人の労働環境を国と一部異なるかたちで想定しているためです。

年間労働日数 焼却灰付近での作業時間 重機による遮蔽※1
環境省 250日(2,000h) 4h/日 ,1,000h/年 あり
京都市 250日(2,000h) 6h/日 ,1,500h/年 なし

※1 重機による遮蔽・・・作業者が重機に乗っていることで、地面および大気中から浴びる放射能汚染の軽減を意味しています。

京都市の用いる基準値は環境省よりもさらに厳しいかたちとなります。ただし、環境省の埋立て方法でも十分、IAEAより「妥当」と認められています。

安全の基準にセシウムばかり用いられているが、ストロンチウムやプルトニウムなどもチェックする必要があるのでは?

被災地で放射性物質を測定したところ、セシウムの濃度が圧倒的で、それ以外のものが身体へ影響を及ぼすレベルではないごく少量しか測定されなかったため、放射性セシウム濃度が基準にされています。

以下、環境省の広域処理についての「よくあるご質問」より掲載

文部科学省によるプルトニウム、ストロンチウムの核種分析によって、福島第一原発から80km圏内におけるプルトニウム238、239、240およびストロンチウム89、90の拡散状況が確認されました。その結果、「セシウム134、137の50年間積算実効線量(50年間被ばくし続けた場合の積算線量)にくらべて、プルトニウムやストロンチウムの50年間積算実効線量は非常に小さいことから、今後の被ばく線量評価や除染対策においては、セシウム134、137の沈着量に着目していくことが適切である」とされています。

「プルトニウム、ストロンチウムの核種分析の結果について」(平成23年9月30日文部科学省)

沈着量の最高値が検出された各箇所における50年間積算実効線量

セシウム134: 71ミリシーベルト
セシウム137: 2000ミリシーベルト
プルトニウム238: 0.027ミリシーベルト
プルトニウム239+240: 0.12ミリシーベルト
ストロンチウム89: 0.0006ミリシーベルト
ストロンチウム90: 0.12ミリシーベルト

(参考)日本の平均一人当たりの年間放射線量 1.48mSv/年

アスベストや六価クロムなど放射性物質以外の有害物質は問題ないか?

放射性物質以外の有害物質についても、通常測定されるのと同様に安全性の確認がなされています。物質によって測定の頻度は異なりますが、通常の廃棄物の規定と変わらずがれきにおいても対応しています。

そのため、ダイオキシン、六価クロム、アスベストなどもきちんと安全性を満たすものが受入れの大前提となっており、受入側のクリーンセンターにおいても同様に安全性の確認がなされています。

自然の放射性物質と原発の放射性物質とは性質が異なるのではないか?

性質は同じものです。

自然界に存在する元素としてラドン、ウラン、トリウムなどがあり、自然界に存在しない元素としてはプルトニウムがあるという意味で、放射性核種は異なります。しかし、放射線の種類はα線、β線、γ線、中性子線、X線のみで、性質は同じものと言えます。また、自然の放射性物質と原発の放射性物質の対処方法も同じです。

【3.焼却、埋立て方法とその安全性】

京都市での広域処理はどこで実施するのか?

まだ決まっていません。
現在、京都市内の南部クリーンセンター、東北部クリーンセンター、北部クリーンセンターのいずれかで検討されているところです。
※確定した時点で改めてご報告をさせていただきます。

がれきを燃やすときに、セシウムなどの放射性物質が大気中に出てしまうのでは?

放射性セシウムは、バグフィルターでほぼ100%除去できます。

焼却施設であるクリーンセンターには、排ガス中の微粒子の灰を除去する高性能の排ガス処理装置(バグフィルター)がそなわっており、こちらでほぼ100%の放射性セシウムを除去することが可能です。

また、京都市の北部クリーンセンターや東北部クリーンセンターでは、バグフィルターの後、さらにダイオキシン類など排ガス中の微量有害物質を活性コークス(活性炭)で吸着除去できる活性炭吸着塔が備え付けられております。バグフィルターだけでも十分放射性セシウムは除去が可能ですが、さらに高い機能を持ち備えた装置も設置されています。

放射性物質は焼却時に気体となって煙突から煙として出てしまうのでは?

そういった問題はありません。

セシウムの沸点は約650℃なので、がれきを燃やすと、がれきに含まれているセシウムは気体になって排ガス中に含まれます。ただし、排ガスはバグフィルターの手前で200℃以下に冷やされるため、排ガス中のセシウムは気体から固体に戻り、排ガス中の灰に付着します。この微粒子の灰がバグフィルターで除去されるため、大気中へ放射性物質が飛散することはありません。

焼却による飛灰は、被災地で行われている焼却状況の結果から埋立て目安を超える(8,000ベクレル/kg)ものも検出されているが、京都ではどのように処理するのか?

京都市では、災害廃棄物広域処理に係る専門家委員会を設置し、現在埋立て基準値を検討しているところです。この専門家委員会で具体的ながれきの受入れ数値が確定すれば、焼却による飛灰が埋立ての基準値を超えないように一般ごみとの混焼割合を調整するという対応がなされます。

京都市の広域処理で受け入れた分の焼却灰の埋め立てはどこで行うのか?

関西共通の広域埋立て処理施設である大阪湾フェニックスに埋め立てます。

なぜ京都市内の最終処分地ではなくフェニックスを使用するのか?

もともと、フェニックス処分場(正式名称 大阪湾広域臨海環境整備センター)は、国の法律に従って、近畿の内陸部では最終処分地が不足してきていることから、近畿一円の焼却灰を処分する施設として広域自治体(174自治体)で作った施設です。その設立経緯から、この処分場を広域処理の近畿の拠点にするのが最も妥当だということで関西広域連合でここを使用することが決まりました。

がれきを燃やしたあとの灰を埋め立てると、セシウムなどの放射性物質が地下水となってしみ出る危険性があるのでは?

環境省から示された方法に従っての埋立てを想定しており、放射性物質の流出を防ぐため地下水へしみ出ることはありません。

環境省の広域処理情報サイトで詳細が書かれているため割愛しますが、がれきの上には覆土、一定間隔で中間覆土、底には保護マット、遮水シートが2重に敷かれる仕組みとなっておりますので、漏水の心配はありません。また、仮に保護マットが破れても、電気的検知方法や圧力検知方法などを用いて場所を特定し、処理されます。

半永久的になくならない放射性物質を含む埋立地をずっと管理することはできるのか?

福島の原発事故ではセシウム134及びセシウム137の濃度が圧倒的で、その他の放射性物質に関してはすでに半減期を超えてほとんど検出されなくなっているものや、身体に害を及ぼすレベルではないという判断が環境省からも示されています。

半減期
セシウム134 = 2年
セシウム137 = 30年

上記より、半減期を迎えるまでの一定期間適切な処置が求められます。そのため、永続的に厳重な保管体制をしかなければならないということではありません。