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五山送り火騒動について

京都市圧縮梱包施設前にて
屋内で保管されている薪

1.私たちの想い

五山送り火騒動の早期解決を

門川市長は、平成23年8月16日の五山送り火にあたり、大文字で燃やす予定で岩手県陸前高田市の薪を取り寄せました。しかしながら、その薪からセシウムが検出をされために、科学的な安全性の検証を十分にすることなく、五山送り火への使用を中止しました。この送り火騒動から1年が経過をしようとしています。しかしながら、この騒動の薪は、未だに西京区の市の施設に放置されております。

この問題は、震災の復興そのものにも大きな影響を与えています。この騒動の前には、全国各地の自治体ががれきの広域処理に協力する意向でした。しかしながら、この騒動以後、がれきの受け入れに積極的な自治体が激減しております。京都市が誇る宗教学者である山折哲雄氏は「風評被害を鎮める絶好のチャンスを逃した。京都の歴史に残る汚点で、非常に情けない」と発言しています。また、関谷尚也東洋大準教授は、五山送り火騒動は「クレーム対応の問題」であったにも関わらず、岩手、宮城のがれきにまで放射性物質の汚染が広がっている印象を全国各地の自治体に与え、風評被害の源泉にまでなったと指摘しています。

がれきの処理は被災地復興の第一歩であり、広域処理が必要です。
この薪は、丹羽太貫京都大名誉教授(放射線生物学)が「仮に表皮を1キロ食べ、全て体に吸収されたとしても取るに足らない線量」と指摘するなど、その安全性は確認されております。
一部、薪の表皮からセシウムが1,130ベクレル/kg検出されたとして、処分できないとの指摘もあります。しかし、1,130ベクレル/kgと言う数字は全体のごくごく一部で、中身からはセシウムが検出されておりません。そのため、仮に表皮全体が同様の濃度で、表皮部分は重量比で全体の約1%とすると、薪全体の平均濃度は10ベクレル/kg程度になるのです。したがって焼却処分することはIAEA(国際原子力機関)のクリアランスレベル(100ベクレル/kg以下)の基準値以内となります。
また、中身と表皮を別に処理する場合、中身はセシウムがごくわずかしか検出されておりませんから、燃やすことは問題ありません。表皮は1,130ベクレル/kgなので、一般ごみ等他のものに混ぜて焼却処分する方法や、鯖江市で同じ陸前高田の薪を土砂崩れ防止用の杭として再利用することも可能です。

京都市会は、期限を明示した京都党案の決議を否決したものの、「陸前高田から取り寄せた薪の早期解決に関する決議」においては、本党を始め、自民、共産、民主、公明、みんなの党・無所属の会の全会派の満場一致で可決を致しました。

京都市は問題を先送りすることなく、一刻も早くその対応策を検討し、今年の五山の送り火である平成24年8月16日を迎える前に、この問題解決を図るべきです。市民の皆様のご理解をどうぞお願いいたします。

2.決議

 1 否決された京都党の決議

市会議第27号

五山の送り火騒動における陸前高田市の薪の早期決着に関する決議について
五山の送り火騒動における陸前高田市の薪の早期決着に関する決議を次のとおり提出する。
平成24年5月28日提出

提出者  市会議員 江村 理紗 ほか3名
(京都党市議団)

五山の送り火騒動における陸前高田市の薪の早期決着に関する決議

平成23年8月16日の五山の送り火に当たり,岩手県陸前高田市の薪を大文字で燃やす計画で譲り受けた薪が,いまだに西京区の圧縮梱包施設で保管されたままとなっている。京都市の二転三転した対応により発生した風評被害は,昨今の災害がれきの広域処理の妨げの一因となっており,早期に解決を図ることが求められる。
五山の送り火騒動から1年が経過をしようとしている。被災者の気持ちに配慮し,市民の安全を確保したうえで,適切な解決方法を検討し,問題を先送りすることなく,遅くとも平成24年8月16日の五山の送り火までに,その解決を行うことを京都市に対して強く求める。

以上,決議する。

    年  月  日

京 都 市 会

 2 全会派一致で可決された決議

市会議第26号
陸前高田市から取り寄せた薪の早期解決に関する決議について
陸前高田市から取り寄せた薪の早期解決に関する決議を次のとおり提出する。
平成24年5月28日提出

提出者  市会議員 井上 与一郎 ほか36名
自民党市議団,公明党市議団,みんなの党・無所属の会

陸前高田市から取り寄せた薪の早期解決に関する決議

 昨年の夏,五山の送り火のために岩手県陸前高田市から取り寄せた薪が,現在もなお,西京区内の市の施設に保管されている。
 この薪は,未曾有の大震災に遭われた多くの被災者を供養するための尊い薪であるが,放射性セシウムが検出されたため使用を断念したものである。間もなく今年も五山の送り火を迎えるが,被災地,被災者の方々の心に思いをはせたとき,一日も早く適切に対応することが求められる。
 よって京都市会は,京都の英知を結集し,科学的知見に基づいて市民の安心安全を確保したうえで,市民の合意が得られるよう努め,適切な解決方法を早急に決定し,実行するよう京都市に対して強く要請する。

 以上,決議する。

年  月  日

京 都 市 会

3.動画レポート

昨年の五山の送り火の薪について、経緯や思いを語る陸前高田の鈴木繁治氏。

①薪にこめた字の想い

②最初の検査

③断念の経緯

④京都市長からの電話

⑤西京区の薪

⑥がれき処理の切実な思い

4.薪の現状

薪の現状

視察実施日:平成24年5月8日(火曜日)
視察先:京都市圧縮梱包施設(旧西部クリーンセンター 西京区沓掛)

<現在の薪の状況と今後について>
「京都五山送り火」で燃やされるはずだった薪は、その後岩手に返されることなく、京都市西京区の圧縮梱包施設にて現在も保管されています。コンクリートブロック造りの旧機械室内でブルーシートの覆いの下に、10数本単位に小分けにした状態で二重のゴミ袋に入れられた状態は、一見過度に厳重とも思われます。しかし、ビニール袋で覆っているのは木くずが飛び散らないようにするためであり、放射性物質の飛散を懸念したものではありません。実際に、保管の室内と屋外での放射線量は変わらないとのことです。

5.経緯

陸前高田の薪と五山の送り火騒動の経緯

事の発端は、大分県在住の芸術家の発案によって、高田松原の松の薪に被災者の思いを記して五山の送り火で一緒に焚けないかという提案があったことにはじまります。被災地と大文字保存会はともにその提案を快諾し、プロジェクトが立ち上がりました。そして、陸前高田の薪には300人余りの被災地の方々が一本一本震災で亡くなった家族の鎮魂や復興への想いを託しました。しかし、準備は着々と進められるなか、五山送り火で被災地の薪を燃やすことを不安視した方々から、「被災地の薪を受け入れるべきでない」と大文字保存会及び京都市に苦情が殺到し、事態は急変します。

  1. 当初、放射性物質を懸念する市民からの声が京都市文化財保護課に寄せられた際、京都市は苦情を大文字保存会で受けるよう要請し、サンプル用に仕入れていた陸前高田の薪と例年使用している大文字の薪両方の、放射能検査の実施を指示。
  2. 大文字保存会は全ての薪の表皮を削って検査を行い、その結果、基準値を超えるセシウムは検出されず、安全と判断された。
  3. しかし、安全性は確認できたものの、放射性物資を含む薪を燃やすことに対して不安視する市民の声は依然として治まらず、大文字保存会は計画を決行するか、あるいは中止するかという極めて難しい判断を迫られた。ただ、京都市はこの際、市としての判断は見送り、一切の判断を保存会の責任とした。
  4. 大文字保存会は苦渋のすえ「中止」という決断を下す。そして、京都市にその旨を伝えると、当局は要請や慰留もなく了承。
  5. 結局、薪は陸前高田市で大文字の迎え火として焚かれ、そのニュースは全国各地で報道される。
  6. この時点で京都党は市長に対し要望書を提出。【※要望書の詳細はこちら
  7. 騒動が拡大した後、京都市はこれまで大文字保存会の自主性に任せるとの姿勢を示していたが、一転して陸前高田の薪の一部を京都で受け入れるよう大文字保存会に依頼。しかし、大文字保存会は、すでに一度「陸前高田市の薪の受入をしない」との話がまとまっていたため、京都市の要望を拒否。
  8. 京都市は次に、陸前高田の薪の提供者である鈴木氏に市長自ら電話で薪の受入を依頼。しかし、騒動一連の流れに心を痛めていた鈴木氏はその要望を拒否。
  9. その後、京都市は陸前高田の薪を福井県のNPO団体が保存していることを知り、そこから500本の薪を調達。
  10. 調達した薪でさっそく放射能検査を実施。しかし、検査の結果、表皮から基準値を超える量のセシウムが検出される。このことは再び全国ニュースで大々的に取り上げられることとなった。結局、“基準値を超える薪を燃やすことはできない”と判断し、五山送り火で陸前高田の薪を燃やすことを断念。
  11. 使用されなかった薪はその後、現在に至るまで西京区の圧縮梱包施設の倉庫内で保管されている。

コメント

もともと東日本大震災で亡くなられた方々の鎮魂と、復興への願いを込めて計画されたものが、結果として被災地の方々を悲しませてしまう事態となりました。

今となっては遅いことですが、やはり事の発端は、市民からの不安の声があがって大文字保存会が改めて決断を迫られた際に、京都市としてその判断にきちんと介入すべきでした。もともと、五山送り火は京都市無形文化財にも登録されております。この「文化財」として認められているものに関しては、京都市文化財保護条例第3条に基づき、京都市が適切に措置を行う必要があります。

使用されなかった薪は、五山送り火から半年以上が経過しても未だ放置されたままとなっています。

※補足ですが、平成23年4月、環境省が全国の自治体に災害廃棄物処理の受け入れをお願いしたところ、572市町村・一部事務組合が受け入れを表明していましたが、騒動後の同年10月時点では、受け入れ前向きな自治体は54自治体へと激減しています。