1. HOME
  2. ブログ
  3. 福祉が破綻しないための、これから福祉

福祉が破綻しないための、これから福祉

<長寿化と少子化の同時進行で福祉が制度破綻へ>
日本社会は、「人生100年時代」に突入し、間もなく高齢者人口の割合が30%を超える。そもそも長寿化は大変喜ばしいことであり、歓迎すべきことである。しかし、別の要因である少子化が同時並行で進むことで、大きな課題となっている。

高齢者と、高齢者の福祉を支える現役世代の割合が年々縮まり、一昔前は高齢者1人を複数人の現役世代で支えていたのが、2020年現在は、高齢者1人を約2人の現役世代で支える構造となっている。30年後の2050年には、高齢者1人を現役世代1.2人で支える推計だ。

当然、年金も医療も介護も全ての福祉が制度破綻を起こし始めている。福祉施策を、持続可能な仕組みにするため、抜本的な見直しが求められる。

<例えば自立支援介護という考え方>
これまでは、高齢になって、出来なくなったり、不便になったりしたことを補完するのが介護だった。しかし、上述の通り、このままいくと介護保険の制度破綻・財政破綻は免れない。そこで、注目すべきは「自立支援介護」という考え方だ。「自立支援介護」とは、リハビリを通じて低下した機能を改善することで本人の自立を支援する介護だ。つまり、介護で症状を治すことで、介護からの卒業を目指す。

高齢者にとっても元気になるのが一番であり、それで、福祉の負担が減るなら、これに越したことがないのだ。

一例を挙げよう。奈良の天理市は教育事業を展開するKUMONと共同で興味深い実証実験を行った。子ども達が勉強する「公文式」で有名なKUMONである。天理市では、高齢者向けに「脳の健康教室」を開き、KUMONのノウハウで簡単な読み書き計算とコミュニケーション学習支援を行っている。週に1回、教室に通い、「読み書き教材」と「計算教材」をそれぞれ3枚ずつ解く。そして、採点をした後、当日の学習の振り返りをするという非常にシンプルなもの。教室に来ない他の6日間も自宅学習教材で同様の勉強をする。

認知機能を表すMMSEという指標が、26点以下であると軽度認知障害や認知症の疑いがあるのですが、実証実験では、開始時に疑いのあった高齢者の8割以上のMMSEの数値が改善した。つまり、子ども達が繰り返し学習に使っているKUMONの教材を高齢者向けにアレンジすることで認知症が着実に改善する結果が出たのだ。
<福祉施策も成果連動型で>
この天理市の取組みは、実はもう1つ肝がある。それは、天理市はKUMONに対して成果連動型で報酬を払っている点だ。これまでの自治体のやり方というのは、成果が高かろうが低かろうが、固定金額で事業者に委託するのが当たり前だ。しかし、それでは事業者も成果を高めるインセンティブが働かない。

KUMONがどんどん頑張って、認知症の方を減らしたり、認知症になる方を未然に予防したりしてくれたら、それに越したことはない。であれば、成果に合わせて報酬を高めるのが合理的。民間では、成果報酬は当たり前に行われていることだ。

しかし、自治体からすると、追加で成果報酬を支払う財源はどうするのかという議論になる。民間であれば、売上が増える分、その一部を成果報酬にまわせば良いという考え方だ。自治体であれば、成果に合わせて歳出が減るとすると、その削減分から一部成果報酬にまわすことは可能だ。

天理市とKUMONの事例で言えば、認知症の改善や認知症の予防により、掛かるはずの介護・医療コストが抑制できるわけだ。利用している高齢者は健康になり、事業者のKUMONは儲かる、自治体は医療・介護のコストが削減できる。まさに三方よしの取組みだ。

<京都市でも福祉にPFSを>
冒頭に書いたように、少子長寿化の中で福祉制度は破綻に向かっている。だからと言って、福祉を切り捨てるわけにもいかない。サービスを下げずにコストは下げるということが必要なのだ。成果連動型報酬による自立支援介護は、それを体現した貴重な事例である。

困っている人にお金を渡すのでなく、困っている人を助けられる人にお金を渡すことがポイントだ。福祉を破綻させないための発想の転換である。

成果連動型報酬はPFS(Pay For Success)と呼ばれている取組みだ。京都党は、京都市の福祉施策にもPFSを取り入れるよう提案を続けている。