対談:『川崎市長 福田紀彦 X 村山祥栄』

対談:『川崎市長 福田紀彦 X 村山祥栄』

京都市の人口を抜いた川崎

福田紀彦
ようこそ、川崎市へ。
村山祥栄
今日はありがとうございます。大逆転勝利の市長選から一年半経ちましたがどうですか。
福田紀彦
そうですね。あの時は99%負けると言われていましたから(笑)色々ありますが、課題山積です。
村山祥栄
そうでしょうか。京都市は遂に今年、川崎市に人口で抜かれました。川崎市はあと20年人口が増え続けるという奇跡的な都市ですよ。50年間人口が横ばい、これから減少する京都から見たらバラ色な気がしますが、何が一番課題ですか?
福田紀彦
一番は高齢化です。
村山祥栄
人口減少ではなく、高齢化。首都圏独自の課題ですね。
福田紀彦
しかも難しいのはインフラ。毎年川崎には12,000人が流入しますが、うち50%が21~25歳、20代で見れば75%です。高齢化対策に予算を投入しなければならない一方で、若者への支援、例えば保育所の新設なども同時にやらなきゃいけない。でも、そんなに保育所作っても20年もしないうちに若者が減っていらそんなに沢山いらなくなる。バランスがとても難しいわけです。
村山祥栄
確かに。かつてはとにかく増える、とにかく横ばいで色々なインフラ整備の試算がされていましたが、これからは「一時的に増えて、そこから永続的に減る」という山型のカーブに対処しないといけないと。そう考えると減り続ける自治体のほうが試算は簡単ですね。

都市をひっぱるのは危機感

福田紀彦
自治体なんてものは大変な連続ですよ。川崎はもっと大変な時期を乗り越えてきてます。今の成長もかつての危機感があってこそなんです。川崎はご存知の通り、首都圏一の京浜工業地帯を抱え、かつては四日市と並んで公害のまちでした。
村山祥栄
そうですよね、確かにぜんそくのイメージが。
福田紀彦
そう、その公害の危機感から環境先進都市に生まれ変わった。そして、その後重厚長大産業が衰退。いずず自動車の工場が撤退、京浜工業地帯そのものに陰りが出てきました。ここが川崎の今の危機感で、その逆境が今の川崎の根底にあります。
村山祥栄
なるほど、危機感こそがチャンスだと。たしかにそれは真理かもしれませんね。しかし、今臨海部はすごいことになってます。京浜工業地帯と羽田空港をつなぐ連絡橋建設も決まった。京都が誇る企業、日本電産の中央研究所もここに建設されちゃった。
福田紀彦
そう。日本電産の永守さんには「なぜ、川崎にお越し頂いたのか?」って聞いたら、やっぱり羽田の隣接地の魅力に勝るものはないって。日本電産さんは台湾とシンガポールに海外拠点があるので、羽田に隣接する川崎は最高の立地だと言って頂きました。そうそう、永守さん、京都市も府も川崎に拠点を作るのに何も言ってこないと仰ってましたよ。
村山祥栄
あちゃー。しかし、こうして企業が流出するのを我々は最も恐れているんです。だから、川崎に視察に来ました。敵を知り己を知れば百戦危うからずだと(笑)しかし、すごい。視察をして一番驚いたのは、いずず工場跡地のキングフロントという臨海エリア。今は研究所なんかがどんどん出来て日本の最先端の技術拠点になっていますが、長い間空地だったそうですね。物流センター建設の話が何度もあったにも関わらず。

まちづくりには哲学は必要

福田紀彦
そうです。物流拠点ならすぐにでも空地を埋めることができました。でも全部断った。ここでしかできない、ここでなければならない産業創造にこだわったからです。
村山祥栄
普通、空いたら借り手を探して埋める。でも断り続けた?!
福田紀彦
街づくりにはフィロソフィー(哲学)がいるのです。ただ作ればいいというのでは街はダメになる。そして、この案件にはそういった助言をして下さる素晴らしいアドバイザーがいたということです。知の集積は大切です。
村山祥栄
まちづくりの哲学・・・。知の集積。大変学びが多いですね。
福田紀彦
実は川崎市では年3回日本の最高峰の科学者を集めて意見交換会を開催しています。
村山祥栄
何をするためですか?
福田紀彦
何もありません。ただ集まって話し合うんです。これがすごい。色々な分野の科学者が集まるとそれだけで化学変化が起きて色々なものが生まれる。そうすれば、そこからビジネスにつながることも沢山ある。知の集積が色々なものを生むのです。
村山祥栄
なんか壮大ですね。ちなみに最近の会では何を話し合われたのですか?
福田紀彦
破壊的イノベーションか、持続的イノベーションかというテーマでした。持続的イノベーションはいいが、破壊的イノベーションが起こったときには勝てないと。まあこんな話です。京都党は破壊的イノベーションだよね。
村山祥栄
うーん。どちらかに分けるとそうなるのでしょうか(笑)しかし、そろそろ時間ですね。
福田紀彦
京都党は京都党さんが思っている以上に全国的には注目されていますよ。大体ですね、私はやったほうだからあまり言えませんが、例えば今年のプレミアム商品券、京都党は反対したでしょ。みんな理不尽、おかしいと分かっていたけど言えなかった。悶々としていたわけです。それをおかしいというのは、国のぶらさがりでない地域政党しかないでしょ。だから、是非頑張ってください。
村山祥栄
引き続き是非ご指導下さい。ありがとうございました。