江村理紗(右京区選出) 令和6年11月市会 代表質問

指定避難所の受入可能人数の算出について

・国の動き
・能登半島地震と地域からのお声
・結論
・計測して見えてきた避難所の現状
・受入可能状況を調査した今後の捉え方

・質問のポイント
地域住民との現地調査を基に、京都市が公表する避難所の収容人数が、通路の未考慮や固定備品の影響、算出方法の誤差により実態の約40%にとどまると指摘。国が導入を進める国際的な「スフィア基準」を見据え、居住に不向きな教室を除外するなど、実態に即した受入人数の再検証を強く求めました。 また、学校での長期避難は過密化による災害関連死のリスクを高め、最優先すべき教育再開の遅れを招くと主張。これらを防ぐため、長期避難者向けの「2次避難所」の活用想定を強化するとともに、その中継地となる「1.5次避難所」の設置を京都府・京都市の協調で防災計画に組み込むよう提言しました。

右京区選出の江村理紗です。維新・京都・国民市会議員団を代表して質問いたします。

 昨今、国からは災害時に設置する避難所の環境改善に向け、今後、災害が起きて避難所が設けられた場合は、発生から48時間以内に災害時の避難所などで人道的な最低生活水準を確保するための国際的な指針であるスフィア基準を満たすことができるよう、トイレや食事の確保など自治体に必要な支援を行っていく考えを示しました。地震大国日本が抱える避難所環境の課題に対応する待望の動きであり、特に災害関連死の防止に向けた体制強化が進むことが期待されます。避難所の環境改善は、単に避難者の生活を支えるだけでなく、災害時の命を守るための基盤であり、私たちにとって喫緊の課題です。今年は能登半島地震や宮崎県沖地震が発生し、地震への緊張感が一層高まりました。こうした中、市内の多くの地域でも防災意識は高まっており、区の防災研修会での避難所運営ゲームHUGなどを通じ、避難者受入れや運営の難しさを実感した、病気の人や子供、外国人など要配慮者を含む多様な避難者への対応は非常に困難、また、避難所の収容人数は計画と現実にかい離があるなど真剣に向き合ううえでの御心配のお声を多く頂いています。

 過日、市長総括質疑では、避難所の充足率は3倍程度のキャパシティを確保しており、必要最低限のものは満たしていると考えているとの答弁がありました。一方で、今後国の基準見直しも含め、より適切な避難所の在り方を考え、避難所及び資機材の確保に努めていく必要があるとの見解も示されました。そこで今回、地域の自主防災会の方々と共に避難所となる施設の現地調査を実施しました。その結果、明らかになった現状と課題を御報告し、今後の改善に向けた提案を行います。

 まず、実地計測による受入可能人数として見えてきた結論から申し上げます。今回、避難所指定されている小学校、小中一貫校など数箇所を回り計測し当てはめたところ、実際の受入人数は京都市公表の収容人数の40パーセント程度にとどまる結果となりました。この結果は驚かれるかもしれませんが、計画と実際の間に大きなかい離があることを示しています。今後の計画に少しでもいかしていただきたく、具体的に内容を御説明したいと思います。

 原因の一つは、避難所運営に必要な通路スペースの未考慮です。避難所として一般的な体育館を例に、市内でよく見られる15.5メートル掛ける28メートルのサイズを想定して検討しました。(パネルを示す)現行の算出方法では総面積を基に一人当たり2平米を割り当てていますが、その場合はこのようになります。図面で示すと一目瞭然ですが、避難者が寝転ばず座っているだけであれば、この人数を収容できるかもしれません。しかし、一定期間、ここで生活することを考えると、無理が生じるのは明らかです。(パネルを示す)そこで、最低限1メートル幅の通路を確保した場合をシミュレーションするとこのようになります。この場合、京都市の一般的な体育館での受入可能人数は、現行の想定よりも55パーセント減少する結果となります。

 次に、建物の構造や備品が受入可能人数に与える影響についてです。(パネルを示す)体育館のステージ部分や倉庫、家庭科室、図書室など、多くのスペースは避難者の居住空間として利用できないのが現状です。ここでは家庭科室を例に備品を配置した際の図面で説明します。今回回った小中学校は、いずれのところでも家庭科室や理科室、技術室等で、固定机や大きな洗い場が設けられていました。(パネルを示す)そこに京都市が想定する人数を単純に割り当てると、このようになります。(パネルを示す)市長総括質疑で担当課も御理解をされているとおり、備品との重複部分は避難者が居住スペースとして利用することはできません。そのため備品と通路を考慮した配置とすると体育館よりさらに受入可能人数が減少します。(パネルを示す)また、本市は壁芯面積を基に収容人数を算出しておりますが、実際には壁の内側の内のり面積しか利用できるスペースはありません。(パネルを示す)一般的には面積で5パーセントから8パーセントの差が生じるとされています。実際に計測したところ、教室では縦横幅各20センチメートルから30センチメートルほど狭く、この点も使用には計画とのズレが生じてしまいます。床面積を計算する方法として、建築基準法施行令第2条第1項第3号で壁芯面積が規定されており、設計図や建築確認申請などに用いられるなど、設計と施工の連携をスムーズにする有効な方法であることは事実です。避難所の収容人数を算出する場合は、建築確認申請や何らかの施工を行うのではなく、居住スペース等として実際に使える面積を割り出すことが目的であるため、壁芯を用いるメリットはなく誤差を生じさせる原因でしかありません。そのほか、今の計画では、居住スペースに含んでいますが、家庭科室は炊き出し、保健室は救護室としての機能も想定されます。また、図書室は図書が崩れ落ちる危険性、倉庫は大型物品が多く、更衣室は窓がないなど、避難所機能には含めても居住スペース利用には不向きな教室も見直していくべきです。(パネルを示す)また、理科準備室は、訪問したどの学校も物品であふれ返っております。薬品も多く保管されていることから、そもそも避難所としての利用を想定から外すべきだと考えます。

 今回、普通教室の生徒机や特別教室の大型の机など移動できそうな備品は極力廊下に出す想定で算出しましたが、想定から省いた物品が非常に多いため、実際には廊下に収まりきらず教室の居住スペースを更に圧迫する可能性があることを補足しておきます。

 これまで、国では、災害対策基本法に基づき避難所運営ガイドラインを示してきましたが、一人当たりのスペースについて面積の明示はなく、自治体の判断に委ねられています。京都市の算出方法は確かに多くの自治体で採用されているものです。とはいえ、市民のための計画として、実態に寄り添う姿勢が求められます。例えば静岡市では、指定避難所ごとに管理者から開放可能な教室やスペースを確認し、利用可能面積を出しています。そのうえで、通路も考慮し一人当たり3平米を基準に受入可能人数を算出しています。静岡市へ問い合わせたところ、他都市と同じ方法にこだわらず、市民が避難しやすいように実態に即した算出を心掛けているとのことでした。京都市の複数の現場を地域の方々と共に調査した感想としても、静岡市の算出方法の方がより実態に即しているように感じられます。京都市の避難所で受け入れられる人数が6割減少したとしても、市が想定する花折断層地震による避難者想定16万5,000名には何とか対応できます。しかし、市の避難所運営マニュアルで求められる備蓄物資の保管や要配慮者向けの救護室、ペット避難のためのスペースなど体育館以外の個室の確保を考えると余裕があるとは言えない状況です。また、災害が起こればまず避難所へと認識している方も少なくありませんが、倒壊などの不安がなければ自宅待機が基本であることも改めて共有が必要であると考えます。さらに、行政区別に見ると、上京区、左京区、下京区、南区、伏見区では充足率100パーセントをこの時点で下回ります。加えて、国が年度内の指針改定で取り込む方向のスフィア基準は、一人当たりのスペースが現行の2平米から3.5平米となるため、収容人数はさらに43パーセント減ることとなります。この場合、京都市の防災計画、特に収容人数とその充足率は根本的な見直しを迫られることになり、迅速かつ的確な対応が望まれます。

 以上の調査と検証を踏まえると、指定避難所の受入可能人数は、住民の安全を確保し、効率的かつ計画的な災害対応を可能とするための重要な指標であることから、計画から大きなかい離を生じさせないよう、実態に即した人数への再検証が必要と考えますがいかがでしょうか。

 国際基準の反映を見込むこの機会に、体育館や教室内の居住スペースには通路の確保が不可欠であることを明確にし、加えて避難所としての利用は認めつつも居住スペースの計算から除外すべき教室の選定も御検討いただきたいと存じます。市長及び京都市としてのお考えをお示しください。指定避難所の実態と今後の指針改定を踏まえると、現状の教育機関を中心とした指定避難所体制での長期避難は非常に難しいと言えます。これまでの地震災害では、避難所として学校を使用することで授業再開が遅れる事態が度々発生してきました。復興において教育は特に優先すべき分野であることからも、避難所の在り方を根本的に考えるべきです。

 2次避難所は、福祉避難所を中心に想定されてきましたが、今後は要配慮者や妊産婦及び乳幼児に加え、家屋倒壊等により長期避難が必要な多くの避難者も対象とした2次避難所利用を想定することが重要であると考えます。熊本地震では、避難所が過密となり避難者の7割が車中泊を経験し、エコノミークラス症候群の患者が集中的に発生しました。また、能登半島地震でも、過密状態が深刻化し、体調悪化による災害関連死も懸念されたことから、2次避難所に移るまでのつなぎとして、余震などを考慮し少し離れたスポーツセンターなどに1.5次避難所が開設されました。例えば京都なら京都市体育館をはじめ府内の屋内体育館などが考えられると思います。今回の基準見直しを機に、2次避難所の活用想定を強化するとともに、その中継地としての1.5次避難所の設置も府市協調で計画に組み込むことが重要であると考えます。この点についてもお考えをお示しください。

 以上で私の質問を終えます。御清聴誠にありがとうございました。